滲出性中耳炎について こども編
2020年9月1日
子供さんが耳鼻咽喉科に通院している原因の一つに、滲出性中耳炎があります。週に数回、耳鼻咽喉科へ鼻処置と通気治療に通っていることが多いと思います。
子供の滲出性中耳炎について重要なことは、ほとんど治るということです。ただ、難聴があると言葉の覚えが遅くなる、まれに慢性中耳炎や癒着性中耳炎、真珠腫性中耳炎になることがあります。慢性化させないこと、聞こえに支障がないようにすることを主眼においた治療が大事です。
原因としては、急性中耳炎が、治療の中断などで完全に治りきらなかったためです。副鼻腔炎(ちくのう)・アレルギー性鼻炎・アデノイド肥大・鼻ススリなどで耳管(鼻と耳のとおり道)が詰まったためです。
症状は、耳の聞こえが悪くなる。耳がふさがった感じがする。発熱や痛みはなく、耳だれもありません。
治療は、原因となる、副鼻腔炎(ちくのう)、アレルギー性鼻炎、アデノイド肥大、鼻ススリが無いかチェックします。あれば、原因に対する治療を行います。
それでも治らない場合は、鼓膜切開をしますが、切開してもすぐ再発する場合は鼓膜換気チューブの挿入を検討します(鼓膜切開は外来でできますが、鼓膜換気チューブの挿入は安静が保てない場合は、全身麻酔下での治療できる病院へ紹介させていただくことがあります)。
治るのまでにどのくらいかかる?
早くても2週間以上かかります。数ヶ月かかることもありますし、再発することも多いです。
2~10ヶ月の間で治ったり、再発したりするので注意が必要です。
なぜ子供がなりやすいか?特に未就学児。
未就学児は免疫力の発達段階で、集団保育で色々なウイルス、細菌に暴露されやすいです。そのため風邪を引くことが多くなり、耳管(鼻と耳のとおり道)の鼻側に細菌が増えやすくなります。集団保育児では、この細菌が抗生物質に効きにくい状態のことが多く、常に耳管が炎症にさらされやすいため、滲出性中耳炎が長引きやすいです。また、鼻を上手にかめない、アデノイドが4歳頃から大きくなることも原因となります。最近はアレルギー性鼻炎の子供さんが増えており、この患者さんが風邪ひくと簡単に副鼻腔炎(ちくのう)になりやすく滲出性中耳炎が治りにくい要因となります。
当院での滲出性中耳炎の治療について
まず、鼻所見、のどの所見をみて滲出性中耳炎の原因をチェックします。場合により、鼻の奥の細菌の検査をして抗生物質に効きにくい細菌がいないかチェックします。必要ならアデノイドが大きくないかチェックします。
滲出性中耳炎の9割以上は、自然に治るとも言われており、特に鼻所見、のどの所見ない場合は、投薬なしで1ヶ月ほど経過をみます。
改善がない場合は、再度原因精査をして、投薬治療を開始します。ほとんどの場合は、1ヶ月ほどで良くなりますが、原因が改善されなかれば、滲出性中耳炎も治癒しません。
今まで耳鼻咽喉科では、滲出性中耳炎に対して通気治療をしていましたが、原因(耳管の炎症)の治療ではないので、一時的によくなってもすぐ再燃し治療も長引くことが多いと考えます。
そのため、当院では通気治療は必要であれば行いますが、滲出性中耳炎の治療に通気治療をメインとすることはしません。あくまで、原因治療を優先し、結果として滲出性中耳炎がよくなるということをしていきます。